結論:単価交渉は「お願い」じゃなくて「設計」です

SES エンジニアの単価が上がらない理由を聞くと、「会社が搾取している」「景気が悪い」という声をよく耳にします。

もちろん、構造的な問題が存在するのは事実です。

でも正直に言うと、自分側の「戦略の欠如」が原因になっているケースも少なくないと思っています。

単価交渉は「上げてください」とお願いするものじゃなくて、自分の市場価値を設計して、それを正しく伝えるプロセスなんですよね。

今回は、単価が上がらないエンジニアによく見られる「3つの視点の欠如」を整理してみます。


根拠:SES 単価の構造とエンジニア市場のリアル

まず「マージン構造」を理解しよう

SES の単価は、おおよそこういう流れで決まっています。

項目 説明
クライアント支払い単価 現場が払う金額(例:月80万円)
元請け・中間会社のマージン 多段階構造の場合は複数社が取る
自社マージン 所属会社が取る割合(2〜4割が多いと言われる)
エンジニアの手取り 残った分が給与・単価に反映

IPA(情報処理推進機構)の「IT 人材白書」では、IT エンジニアの需給ギャップが年々拡大していると報告されており、スキルのある人材ほど市場での希少性が上がっていることが示されています。

つまり「市場全体では単価が上がりやすい環境」なのに、個人として恩恵を受けられていないとしたら、何かが噛み合っていない可能性が高いんです。

転職市場でも「スキル可視化」が単価を左右する

doda が公開している「エンジニア転職白書」(概要版)によると、同じ経験年数でも、スキルセットの言語化・実績の定量化ができているかどうかで年収提示額に差が出やすいと指摘されています。

「なんとなく 5 年やってきた」より「○○の技術で△△の課題を解決し、工数を30%削減した」という人のほうが、明らかに評価されやすいんですよね。


3つの視点:何が足りないのか

視点①:マージン構造を「知らない」

まず大前提として、自分の単価がどう決まっているかを把握していないエンジニアが多いです。

クライアントが払っている金額・自社のマージン率・自分の手取りの関係を知らないまま「上げてほしい」と言っても、交渉の土台がありません。

「自分の市場単価はいくらか」を転職サービスや求人票で定期的に確認するだけでも、交渉の根拠になります。

視点②:「スキルの棚卸し」をしていない

単価交渉で一番効くのは「代替困難性」です。

「私じゃないとできない理由」を作れているかどうか、ということですね。

具体的には:

  • 特定の技術領域(クラウド、セキュリティ、モダンフロントエンドなど)の専門性
  • 業務ドメイン知識(金融・医療・EC など)
  • チームリードや要件定義の経験

こういった**「掛け合わせのスキル」を言語化して提示できる人**は、単価交渉でも強いです。

視点③:「タイミング」を意識していない

単価交渉には、明らかに通りやすいタイミングがあります。

  • 案件が切り替わる直前・直後
  • 自分のスキルが現場で実証された直後
  • 市場の需要が高まっている技術を習得した直後

「なんとなく年末に言ってみる」ではなく、交渉の「根拠と機会」を意図的に作りにいく姿勢が大事です。


反論への先回り:「個人の努力でどうにもならない構造問題もある」

ここまで読んで、「でも結局、会社や業界の構造が問題でしょ」と感じた方もいると思います。

その指摘は正しいです。

多重下請け構造の中では、個人がどれだけ頑張っても中間マージンの壁を超えられないケースが存在するのは事実です。

厚生労働省の「労働経済動向調査」でも、IT・情報サービス業における賃金格差の一因として、就業形態・契約形態の違いが挙げられています。

「個人の戦略だけで解決できる」とは言い切れません。

ただし、「構造が悪い」という認識と「だから自分には何もできない」という諦めは別の話だと思っています。

構造を変えるのは難しくても、「その構造の中でどのポジションを取るか」は自分で選べる部分があります。

  • 直請けに近い案件を選ぶ
  • フリーランスとして契約形態を変える
  • スキルを高めて希少性を上げる

こういった選択肢は、視点を持っている人にしか見えてこないんですよね。


補足:あなたの「単価が上がらない理由」はどれですか?

最後に、少し自問してみてください。

  • 自分の市場単価を、直近 3 ヶ月以内に調べましたか?
  • 自分のスキルを「他人に説明できる言葉」で整理できていますか?
  • 単価を上げる「タイミング」を意図的に作りにいったことがありますか?

3 つ全部「No」なら、まずそこから始めてみると景色が変わるかもしれません。

「単価が上がらない」は嘆くより、分解するほうが早いです。

構造を理解して、スキルを可視化して、タイミングを設計する。

この 3 つの視点を持つだけで、次の交渉は今より少し有利になるんじゃないかと思います。