「SESを抜け出して自社開発に行きたい」
そう言って去っていったエンジニアが、数ヶ月後に「戻れますか」と連絡してくる。
これ、うちの会社では実際に起きていること。一度や二度じゃない。
この記事のまとめ
- 自社開発への転職は「環境改善」ではなく「環境の交換」にすぎないケースが多い
- SES特有のスキル多様性・案件の切り替えやすさは、失ってから気づく人が続出している
- 転職で後悔しないために必要なのは「SES vs 自社開発」の二択思考を捨てること
結論
正直に言います。
自社開発に転職して「思ってたのと違う」と感じる人は、うちの会社の経験上、少なくない印象があります。
dodaなどの転職実態調査でも、IT系転職者の「職場環境・社風」への不満は転職後の後悔理由として上位に挙がり続けています。
自社開発に行けばSESの不満が消える、というのは幻想である可能性が高い。
不満の「種類」が変わるだけで、不満そのものはなくならないケースが多い。
うちの会社の営業として、そういう場面を繰り返し見てきました。
根拠
IPAが毎年発行する「IT人材白書」や、doda・リクルートが公表する転職実態調査によると、IT系職種の転職後に「入社前のイメージと実態のギャップ」を感じる割合は概ね4〜5割に上ると言われています。
特に「働き方・裁量度」と「技術環境」へのギャップは上位常連です。
さらに厚生労働省の雇用動向調査では、情報通信業の離職率は他業種と比べて高水準が続いており、転職後もまた転職、という流れが業界全体で起きています。
「自社開発なら安定」という神話は、データで見ると根拠が薄い。
そしてうちの会社が肌で感じているのは、SESから自社開発に移った人が「技術の幅が急激に狭まった」と感じるケースがある、ということ。
SESにいると、1年で複数の現場・複数の技術スタックに触れる機会がある。
自社開発に行くと、その会社の技術選定に縛られる側面がある。
「モダンな技術を使いたくて転職したのに、社内システムがレガシーだらけだった」という話は、うちの営業の耳にも届くことがあります。
もちろんすべての自社開発企業がそうではありませんが、事前調査なしに飛び込むとこのリスクは高まります。
反論への先回り
もちろん、「自社開発に行って本当によかった」という人もいます。これは否定しません。
特に以下のようなケースでは、転職がプラスに働きやすいと感じています。
- 特定のドメイン(金融・医療・ECなど)に深く関わりたい明確な意志がある
- SESで既に幅広いスキルを積んでおり、次は「深さ」に振りたいフェーズにある
- 転職先の技術スタックや開発文化を事前にしっかり調べている
逆に後悔しやすい傾向があるのは、「SESが嫌だから」という逃げ動機で転職するパターンです。
SESの何が嫌なのかを言語化できていないまま動くと、転職先でも似た種類の不満にぶつかる可能性があります。
うちの会社の営業も、正直なところ「この人は今の現場との相性が悪いだけかもしれない」と感じながら案件を紹介することがあります。
でも転職を止める立場にはない。それが営業の限界でもある。
SES側にも問題はあります。
エンジニアが「なぜ自分はこの現場にいるのか」を理解できないまま案件をアサインし続ける営業のやり方は、転職衝動を生む一因になっている側面があります。
これはうちの会社への自虐でもあります。
補足
あなたが今「SESを抜け出したい」と思っているなら、一度だけ立ち止まって考えてほしいことがあります。
「自社開発に行きたい」のか、それとも「今の現場・今の会社が嫌」なのか。
この二つは全然違います。
前者なら転職は正解かもしれない。
後者なら、まず現場を変える・会社を変えるという選択肢がある。SES内での移動という手が先にあります。
うちの会社の営業は、エンジニアに「転職しないでください」とは言いません。
ただ、「なぜ転職したいのかを言語化できていますか」とは聞きます。
その答えが曖昧なまま動くと、数ヶ月後に「戻れますか」の電話がかかってくる。
それを何度も受けてきた営業として、これだけは伝えておきたかった。
焦らなくていい。でも、考えずに動くのは損です。