結論:「帰属感のなさ」は構造が生み出している
客先常駐エンジニアが「自分はどこの人間なんだろう」と感じる瞬間、ありますよね。
朝は客先に出社して、その会社の文化で働いて、でも名刺には別の会社の名前が書いてある。
この感覚は、個人のメンタルの弱さじゃないと思うんですよ。
雇用関係と指揮命令関係が分離しているという、SES ビジネスモデルそのものの構造から来ているんですよね。
ただ、「だから SES は悪だ」と単純に切り捨てるのも違う。この記事では、構造的な問題を整理しつつ、SES 企業側の取り組みや反論もちゃんと紹介していきます。
根拠:データが示す「エンゲージメントの低さ」
日本全体のエンゲージメント問題
まず大きな文脈として、日本の職場エンゲージメントは国際的に見ても低い水準にあります。
ギャラップ社が毎年発表している「State of the Global Workplace」レポートによると、日本の従業員エンゲージメント率は概ね 5〜6% 前後 と報告されており、これは調査対象国のなかでも最低水準のグループに位置するとされています。
SES エンジニアに限定した公的統計はなかなか見当たりませんが、この数字を見ると「帰属感の薄さ」は SES に限らず日本の職場全体の課題でもあることがわかります。
SES 特有の「二重構造」問題
厚生労働省が公開している「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の解説資料でも触れられているように、指揮命令者(客先)と雇用者(SES 企業)が異なる形態では、労働者が「どちらにも完全には属せない」状況が生まれやすい構造になっています。
IPA(情報処理推進機構)が公開している「IT 人材白書」でも、IT エンジニアのキャリア形成における課題として「所属組織からのサポート不足」が繰り返し指摘されています。
具体的に「帰属感がない」と感じる場面
- 客先の懇親会に呼ばれない(or 呼ばれても微妙な空気がある)
- 自社のことをよく知らないまま数年が経つ
- 評価者(自社の上司)が自分の仕事をほぼ見ていない
- 「あなたはうちの社員じゃないから」と言われる経験
こういった場面が積み重なると、「自分はどこにも属していない」という感覚になるのは自然なことだと思います。
反論への先回り:「SES 企業は何もしていない」は言いすぎ
ここで正直に両論を出しておきます。
「帰属感のなさは SES 企業のせいだ」という批判はよく聞きますが、それだけが原因ではないし、すべての SES 企業が放置しているわけでもないんですよね。
SES 企業側の反論・取り組み
近年、SES 各社が取り組んでいる施策として、こういったものが業界でよく語られています。
| 課題 | 取り組み例 |
|---|---|
| 評価者が現場を見ていない | 月次の 1on1 や現場訪問の義務化 |
| 自社への帰属感が薄い | 社内勉強会・Slack コミュニティの活性化 |
| キャリア相談できる人がいない | キャリアパス面談の定期実施 |
| 仲間意識が生まれにくい | LT 大会・社内ハッカソンの開催 |
こういった取り組みを本気でやっている SES 企業が増えているのも事実です。
客先企業にも責任の一端がある
また、帰属感の問題は SES 企業だけの問題でもありません。
客先企業が「外部の人」として壁を作り続ける限り、どんなに SES 企業が頑張っても限界があります。
「協力会社の人」扱いをやめて、チームの一員として接する文化を客先が作ることも、同じくらい重要なんですよね。
エンジニア自身の関わり方も影響する
さらに言うと、エンジニア自身がどちらのコミュニティにも積極的に関わろうとしているか、という点も無視できません。
「どうせ常駐先は仮の場所」と最初から距離を置いてしまうと、帰属感は生まれにくくなります。
もちろん、それが「自己責任」だとは思いません。ただ、構造・企業・個人の三者がそれぞれ関係しているという複雑さは認識しておきたいところです。
補足:じゃあ、何から変えていけばいいの?
正直、この問題に「これで解決!」という答えはないと思っています。
ただ、帰属感はゼロかイチじゃないんですよね。
「完全に自社に帰属している感覚」でなくても、「ここに居場所がある」と感じる瞬間を増やすことはできます。
SES 企業に求めたいこと
- エンジニアの仕事を「見る人」を明確にする
- 自社コミュニティへの参加を業務時間内に認める
- キャリア相談を形式だけにしない
客先企業に求めたいこと
- 「協力会社」という言葉で線を引きすぎない
- チームの成果として一緒に喜ぶ文化を作る
エンジニア自身ができること
- 自社・客先どちらかだけに依存しない、自分軸のキャリア観を持つ
- 帰属感を「会社」ではなく「仕事の質」や「仲間」に求める選択肢もある
あなたは今、「どこかに属している」と感じていますか?
もしこの記事を読んで「自分もそうかも」と思ったなら、ぜひ自社や客先の誰かに、一度その気持ちを話してみてほしいと思います。
帰属感の問題は、話さないと「ない問題」として扱われ続けてしまうので。