結論:その二択、誰が決めたんでしたっけ
30代エンジニアあるあるのひとつが、「そろそろマネジメントに移行する?それとも技術を極める?」という問いかけです。
上司から言われることもあれば、転職活動中に「どちらを志向していますか?」と面接で聞かれることもある。
でも少し立ち止まって考えてみると、この二択はかなり雑な整理だと思うんですよね。
「技術を極めながら、チームや組織にも影響を与える」という動き方は、実際にはいくらでもあります。
この記事では、二択論がなぜ広まったのかを整理しつつ、第三の道の可能性と、その判断材料になりそうな視点をお伝えします。
根拠:二択論が生まれた背景にある構造
日本のIT人材市場の「役割分離」問題
そもそもこの二択論が広まった背景には、日本のIT組織の構造的な事情があります。
IPA(情報処理推進機構)が公開している「IT人材白書」や「DX白書」では、日本企業のIT組織において**「技術職とマネジメント職のキャリアパスが分断されやすい」**傾向が繰り返し指摘されています。
特に大手SIerやSES企業では、等級制度や評価制度が「管理職ライン」と「専門職ライン」に分かれているケースが多く、30代前後でどちらかに振り分けられる構造になっていることが少なくありません。
給与・評価制度が誘導している
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、管理・監督職への移行は多くの場合、給与水準の上昇と連動しています。
一方で、技術専門職のまま処遇を上げ続ける仕組みが整っている企業は、まだ限られているのが実情です。
結果として、「マネジメントに行かないと年収が上がらない」という圧力が生まれ、本人の意志とは無関係に二択を迫られる場面が増えている、という構造があります。
「テックリード」「エンジニアリングマネージャー(EM)」という概念の浸透
近年、特に自社開発系のスタートアップや外資系企業を中心に、**テックリード(TL)やエンジニアリングマネージャー(EM)**という役割が広がっています。
doda などの転職サービスが公開している求人動向データでも、「テックリード」「EM」というポジションの求人数は年々増加傾向にあると言われています。
これらは「純粋な技術職」でも「純粋な管理職」でもない、第三の役割として機能しています。
反論への先回り:「やっぱり二択が現実的」という声もある
もちろん、「第三の道なんてきれいごとだ」という反論もあります。これは無視できない視点です。
「どっちつかずになるリスク」
技術もマネジメントも中途半端になる、いわゆる「プレイングマネージャー地獄」は実在します。
特に人数の少ない組織では、コードも書きながら採用面接もして、1on1もして、障害対応もして……という状態になりがちで、どちらも深まらないまま消耗するという声は少なくありません。
「会社の制度が追いついていない」
テックリードやEMという概念が整備されているのは、まだ一部の企業に限られます。
多くの中小SIerや伝統的な企業では、そもそもそういったポジションが存在しないため、「第三の道を選びたくても選べない」という現実もあります。
それでも「第三の道」を模索する意味
ただ、だからといって最初から二択に縛られる必要はないと思います。
「今いる会社の制度」と「自分のキャリアの方向性」は、切り離して考えることが大切です。
今の職場にテックリードというポジションがなくても、転職先にはあるかもしれない。あるいは、自分がそのポジションを社内で作っていく動き方もあります。
補足:自分に問いかけてみてほしいこと
二択論に疲れているエンジニアの方に、少し問いかけをさせてください。
- 自分が一番「楽しい」と感じるのは、コードを書いているときか、人の課題を解決しているときか
- 技術的な意思決定に関わりたいのか、組織の意思決定に関わりたいのか
- 5年後、どんな人に「あの人すごい」と思われたいか
この3つを整理するだけで、マネジメントかスペシャリストかという問いの立て方自体が、自分にとって正しいのかどうかが見えてくることがあります。
キャリアの選択肢は、「会社が用意しているメニュー」だけじゃないんですよね。
自分でメニューを作りに行く、あるいはメニューがある会社に移る、という動き方も十分リアルな選択肢です。
「そういえば自分、どっちが好きなんだろう」と少し立ち止まって考えるきっかけになれば、この記事の役割は果たせたかなと思います。