結論:その質問、誰も得していないかもしれない

採用面接でほぼ必ず聞かれる「3年後・5年後のキャリアプランを教えてください」という質問。

正直に言うと、聞く側も答える側も、どこかしんどさを感じていないでしょうか。

応募者は「正解っぽい答え」を用意し、面接官は「模範的な回答」を採点する。
これって、お互いの本音を引き出すどころか、ロールプレイになってしまっている気がするんですよね。

VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)という言葉が一般化して久しいですが、「3年後を明確に描け」という要求は、その前提と真っ向から矛盾しています。

今回はこの古典的な面接質問が、なぜ時代とズレてきているのかを考えてみます。


根拠:キャリアの予測可能性は、もう幻想に近い

まず現実のデータを見てみましょう。

転職市場の流動化という観点では、厚生労働省「雇用動向調査」によると、近年の転職入職率は概ね10〜15%前後で推移しており、3〜4年に一度は職場が変わる計算になります。
「3年後も同じ会社にいる」という前提自体が、統計的には必ずしも当たり前ではないんですよね。

スキルの陳腐化スピードも加速しています。
IPA(情報処理推進機構)の「DX白書」では、デジタル技術の変化に伴いスキルの更新サイクルが短縮していると指摘されています。
3年前に「これが主流」だった技術が、今は別のものに置き換わっているケースは、エンジニアなら肌感覚でわかりますよね。

若手のキャリア観の変化も見逃せません。
就職情報大手のdodaや各種調査では、20〜30代の転職理由として「スキルアップ・成長環境」が上位に挙がり続けています。
「会社に長くいること」より「何を身につけられるか」を重視する傾向は、概ね一貫して強まっていると言われています。

これらを総合すると、「3年後の具体的なプラン」を語れる人が優秀というより、むしろ環境変化を読めていない可能性があるという逆説すら成り立ちます。


反論への先回り:でも「この質問には意味がある」という声もある

ここで正直に言っておきたいのですが、「キャリアプランを聞くこと自体は悪くない」という反論は、かなり筋が通っています。

面接官の立場から見ると、この質問には複数の意図があります。

  • 自己理解の深さを確認したい(「なんとなく転職したい人」かどうかを見る)
  • 自社との方向性のズレを早期発見したい
  • モチベーションの源泉を知りたい

これらは採用の質を上げるうえで、正当な目的です。

また、「答えられない人には問題がある」という見方もあります。
変化が激しいからこそ、「どんな状況でも自分はこういう軸で動く」という芯の部分は語れるはずだ、という考え方ですね。
これも一理あります。

ただ、問題は質問の設計にあるんじゃないかと思っています。
「3年後に何をしていたいか」という問いは、具体的な未来予測を求めすぎている。
一方、「あなたが仕事を通じて大切にしていることは何ですか」なら、同じ意図でもっと本音を引き出せますよね。

従来の質問 代替できる質問
3年後のキャリアプランは? 仕事で大切にしている軸は何ですか?
将来どんなポジションを目指していますか? どんな環境で一番力を発揮できますか?
5年後のビジョンを教えてください 直近1〜2年で伸ばしたいスキルは?

質問を変えるだけで、お互いにとって有益な対話になる可能性は十分あると思います。


補足:採用する側も、される側も「問い直す」タイミングかもしれない

この記事を読んでくれているのが採用担当の方なら、一度こう自問してみてほしいんです。

「その質問の答えで、実際に採用の判断が変わったことはあるか?」

「ない」なら、質問の目的を再設計するチャンスかもしれません。

逆に求職者の方なら、「3年後のプランを聞かれる」ことへの対策を磨くより、「自分の仕事の軸を言語化する」練習のほうが長期的に価値があります。
どんな質問にも応用できますし、何より自分自身のキャリアを考えるうえで役に立つので。

採用面接という場は、企業が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が企業を見極める場でもあります。
「どんな質問をする会社か」は、その会社のカルチャーを映す鏡でもあるんですよね。

「3年後のプランを聞く面接」と「仕事の軸を一緒に考えようとする面接」、どちらの会社で働きたいかは、人によって違うと思います。

でも少なくとも、時代の変化に合わせて「問い方」をアップデートしようとしている会社は、それだけで信頼できるシグナルになるんじゃないでしょうか。

あなたは「3年後のプランを聞かれたとき」、どんな答えを用意していますか?
そしてその答え、本当に自分の本音ですか?